施政方針要旨(平成24年3月2日)

今期定例市議会において、平成二十四年度予算案をはじめとする諸議案をご審議願うにあたり、所信の一端を述べるとともに、主要課題等について基本的な考え方を申し上げ、議員各位並びに市民の皆様の一層のご理解とご協力をお願いするものであります。
私は、市長就任以来、「公明正大な市政・・市民と共に築く風格あるまち」の理念のもと、一期目は自立・持続可能な行財政基盤の確立と協働のまちづくりの推進を最優先課題に据え、二期目は「連携と共栄」をキーワードに市勢の伸展を図ってまいりました。
この間、議員各位並びに市民の皆様の格別のご理解とご協力により様々な施策を進め、財政の健全化や地域の活性化など一定の成果を感じております。しかし一方では、夕日ヶ丘の開発に起因する債務の解消など未だ解決にはいたっていないものもあり、これまで取り組んできた責任と解決に向けた使命感から次期市長選挙への出馬を決意したところでございます。
私に対し、再び市民の皆様の信任がいただけるのであれば、引き続き「連携と共栄」の考え方を基本とし、環日本海交流の促進による圏域の一体的な発展や、市民福祉のさらなる充実に努め、将来に夢と希望が持てるまちに近づけるよう全力を傾注してまいります。
さて、少子高齢化や人口減少が進む昨今の社会情勢を踏まえ、国は消費税の増税を柱とした社会保障と税の一体改革を進めることとしております。
私たち地方におきましても、厳しい財政状況の中、良質で安定した行政サービスの提供に努めておりますが、複雑・多様化する住民ニーズを的確に捉え、ひとつの自治体として諸課題を完結していくことは容易ではありません。
このような厳しい時代にこそ、周辺自治体とのより広くより強い連携をつくり、共に発展していく「連携と共栄」の取り組みが必要であると考えております。
それには、それぞれのまちが特性を生かしながら役割を担い、あたかもひとつのまちを形成するかのように機能することが重要であります。

本市最大の特性は、日本海側拠点港である境港と米子鬼太郎空港というこの圏域の発展に欠くことのできない社会基盤を併せ持っていることであり、対岸諸国へと続く「海と空の道」を活用した環日本海交流の促進により「北東アジアに向けた西日本のゲートウェイ」としての確固たる地歩を占めたいと思っております。
この春、中海市長会に出雲市が加わり新たな市長会が誕生します。ここに鳥取県西部の町村を含めた圏域は、高いポテンシャルを有し環日本海交流への追い風になるものと期待しているところであり、本市の特性を最大限生かした圏域の活性化に努めてまいります。
本市は将来都市像として「環日本海オアシス都市」を掲げております。その歩みを着実に進めるためには、対岸諸国を見据えた環日本海交流の促進とあわせ、市民の皆様が安心して生活できるよう、暮らしに根ざした基本的な施策もしっかりと進めていかなければなりません。
雇用の確保や都市基盤の整備、教育や福祉のさらなる充実など、市民一人ひとりを大切に、皆様が心豊かに快適な毎日を送ることができるよう取り組み、「オアシス」のように人々が集い活気あふれるまちづくりに邁進する決意であります。

規律ある行財政運営と協働の推進

○平成二十四年度予算案について
私は、就任以来、自立・持続可能な財政基盤の確立を標榜し、総人件費の抑制、経常的経費の合理化に取り組むとともに、過去の借金返済である公債費の削減を最優先課題に掲げ、投資的事業を厳選することによって、極力、市債の発行額を抑えてまいりました。
この結果、ピーク時の七割程度に減少した市債残高はもとより、償還額である公債費も平成二十一年度から減少し続けるなど、大きな成果として現れてきているところであります。
しかしながら一方では、防災対策として既存施設の耐震改修を順次行っていく予定としており、その多くが老朽化等によりリニューアルをあわせて行う必要があることから、今後しばらくは多額の施設整備費等が必要となる期間が続くであろうと考えております。
このような状況の中、平成二十四年度予算におきましては、歳入では、市税収入が、評価替えの影響による固定資産税の大幅な落ち込みはあるものの、税制改正等の影響により全体としては前年度より若干の増収が見込まれ、地方交付税を含めた一般財源の総額も、前年度より増加する見込みであります。
歳出におきましては、社会保障関係経費の自然増など、圧縮することができない経費の負担が大きく、また、第二中学校の改築、中小企業等の金融対策などにより、大幅に予算規模が拡大しておりますが、経費全般について節減合理化に努め、地域の活性化を図る諸施策や喫緊の課題には時機を逸することのない対応に最大限配慮して編成したところであります。
今後も、規律ある財政運営を堅持しながら、公債費の削減効果を生かし市民生活に重要な社会資本の整備改修を行うなど、諸課題に取り組んでまいりたいと考えております。

○機構改革について
本市の機構は、平成十年一月の大幅な機構改革によって、六部二十八課体制であった市長部局を四部二十二課体制へ、さらには四部十八課体制へと集約し今日にいたっています。
これは、担当分野別で小規模な課に分裂し、不効率となりがちであった体制を改善したものであり、この機構改革の効果もあって、職員定数を五十人削減する条例改正とその実現が成し得たものと考えております。
しかしながら、その後の社会情勢の変化などにともない各分野での行政課題は複雑高度化する一方であり、四部体制では一部当たりの担当分野が広く、政策立案及びその執行管理を行う管理職、中でも部長への負担が過重な状況となっています。
特に、東日本大震災以降、原子力事故も含めた防災体制の強化を担う産業環境部は、観光、通商などの喫緊課題も集中し、この負担の分散は、各々の分野の政策充実のためにも必須なものと考えており、市長部局において一部を増やし、五部体制に改編したいと考えております。
具体的には、「産業環境部」から防災、環境衛生を分離し、産業に関連する部署のみの構成で「産業部」とし、また「市民生活部」を新設の「福祉保健部」と「市民生活部」に分け、「福祉保健部」には、市民の健康や福祉に関わる部署を集約し、「市民生活部」は、戸籍や住民票あるいは市民税などのほか、自治会、防災など多くの市民が関わることが多い部署で構成した部へ再編するものであります。
今後、ますます多様化する市民のニーズや、喫緊の課題などにこの新体制で的確に応えてまいる所存であります。

○協働のまちづくりの推進について
私は、これからのまちづくりは、市民自ら「自分たちの住むまちのことを考え、自分たちで創り上げていく」ことが大切であるとの思いから、市民と行政が、それぞれの役割と責任を担い、協力しながらより良いまちをつくっていく「協働のまちづくり」を提唱するとともに、行政活動に対する市民参加の取り組みを行ってまいりましたが、市民の皆様にも、協働のまちづくりの意識が醸成されつつあり、まちづくりの様々な場面で協働の取り組みが展開されております。
 また、行政活動に参加していただくために行っている、行政情報の積極的な公開や、政策立案段階から意見等をいただくためのパブリックコメントなどの取り組みも着実に定着してきているところであります。
 今後も、多様化する市民ニーズに対応していくためには、行政、自治会、市民活動団体などが、それぞれの得意分野や特徴を生かして、連携・協力し合いながら地域課題を解決していくことがこれまで以上に重要になってくると考えますので、引き続き、協働のまちづくりや市民の行政参加の取り組みを推進してまいりたいと考えております。

経済の活性化と都市基盤整備

○中海・宍道湖・大山圏域の連携について
本市と、米子市、松江市、安来市の四市で構成する中海市長会は、平成二十四年度から出雲市を加えて新たな市長会を立ち上げます。
また、新市長会には鳥取県西部町村会がオブザーバー参加することとしており、これらを含めた圏域は、人口が六十六万人を超え、日本海側では新潟市に次ぐ人口集積となるほか、製造品出荷額においても日本海側で二位となるなど、観光、経済面で高いポテンシャルを持ち合わせるとともに、日本海側拠点港である境港をはじめ、米子鬼太郎空港、出雲空港など大変恵まれた社会基盤も有することとなります。
私はこれまで、環日本海交流が本格化する中で、日本海側の地域間競争に対等に伍していくためにも、より広くより強い圏域をつくることが必要であると申し上げてきておりますが、この度の新たな圏域誕生は大変大きな意義があり、国内外に強くアピールできるものと考えます。
これまで、中海市長会では、「一歩一歩できることから始めていこう」を合言葉にして、圏域の将来像や発展のための方向性を共有しながら、連携した様々な取り組みを行ってまいりました。
今後は、新たな圏域のビジョンを策定するとともに、観光、環境、産業の三分野を中心にして、空港や港湾といった社会基盤をはじめ、観光資源や豊かな自然環境を生かした連携事業を一つひとつ積み重ねていくなど、当圏域の発展に向けて努力してまいりたいと考えております。

○環日本海交流の推進について
環日本海国際フェリーは、航路開設から二年八ヵ月余りが経過しますが、今日まで安定運航が続いていることから、対岸諸国と本市を結ぶインフラとして定着し、外国人観光客や貨物量も増加傾向にあります。
燃料費の高騰や東日本大震災の影響、さらには他社による競合航路開設の動きなど、運航会社におかれましては、経営状況が大変厳しいながらも航路の安定化に向け最大限の努力をなされているところであります。
この航路は、当圏域の発展に欠かすことのできない「海の道」であるとの認識のもと、これまで初動三年間の期間を定めて支援を行ってまいりましたが、航路をより一層安定化させるために、本市としましては、鳥取県や中海市長会と協調して、さらに一年間、支援を継続してまいりたいと考えております。
なお、本年一月、特殊梱包など、今まで無かった流通サービスを展開する企業が米子市で本格操業を始め、境港の輸出入機能の強化が図られました。これにより本航路のみならず境港のより一層の利用促進が図られ、課題であります貨物の確保に繋がるものと考えております。
一方、「空の道」では、引き続き、関係機関を通じ、ソウル便や台湾をはじめとする国際チャーター便への支援を行い、さらなる利用促進に努めてまいりたいと考えております。
また、昨年から、鳥取県が中国・上海の格安航空会社「春秋航空」に要請しておりましたチャーター便につきまして、定期化にはいたっておりませんが、今月二十九日に上海‐米子鬼太郎空港間で運航されることとなりました。
この度の運航は、将来定期化の可能性を感じさせる非常に明るいニュースであり、本市としましてもこの機会に環日本海オアシス都市・境港としての魅力をピーアールするとともに、定期化に向け、鳥取県と連携を図り、さらなる受入態勢の充実を図ってまいりたいと考えております。
今後も「海と空の道」は、共通の財産であるという認識のもと、圏域全体で航路の利用促進に努めてまいりたいと考えております。

○観光振興について
平成二十三年の「水木しげるロード」の観光入込客数は、二年連続で三百万人を突破し、今や全国に誇る観光地として定着したと考えております。
こうした中、平成二十四年度は、誕生以来二十年目を迎え、さらには、通算入込客数が二千万人を突破する見込みとなっていることから、セレモニーなどの記念事業を盛大に実施することとしております。
現在、「水木しげる記念館」は、改装工事等が順調に進み、いよいよ今月八日にリニューアルオープンを迎える運びとなりました。
当日は、この日に九十歳の誕生日を迎えられる水木しげる先生をはじめ、多くの関係者の皆様をお招きし、賑やかに記念セレモニーを開催することとしております。
また、平成二十二年度に策定した「境港市観光振興プラン」につきましては、関係者のご努力により、現在、重点施策三十三項目中、十八項目について実施済み若しくは着手済みの状況であります。
平成二十四年度におきましても、引き続き、関係者の皆様と本プランを推進し、「新たな妖怪ブロンズ像の設置」、「情報発信・連携強化事業」などに取り組み、賑わいの継続に努めてまいります。
広域観光連携におきましては、従来の中海圏域に、四月から出雲市が加わることとなっており鳥取県西部の町村も含め、この圏域の大幅な魅力向上が期待されております。
さらに、本年は、鳥取県において、「国際まんが博」と「国際マンガサミット」、島根県を中心に、「古事記編さん千三百年」関連行事などの大型イベント、さらに全国のJRグループ挙げての大型宣伝キャンペーン「山陰ディスティネーションキャンペーン」が実施されます。
この圏域にとっては、またとない全国発信の好機となるため、本市においても関連事業の実施や情報発信などを通じて、イベントやキャンペーンを大いに盛り上げてまいりたいと考えております。

○水産業の振興について
境漁港における平成二十三年の水揚量は、十四万七千トン余、前年比約二十五%増で全国三位、水揚金額に関しましても百九十四億円余、前年比約二十七%増で全国九位となりました。
イワシ類やクロマグロ漁が豊漁だったこともあり、水揚量、水揚金額ともに大幅に増加したものの、魚価の低迷、資源の減少、漁業就業者の減少と高齢化、漁船の老朽化など、様々な課題を抱えております。
このような状況の中、漁業就業者対策として、新たに漁船員を雇用し技術習得のための研修を行う企業に、引き続き助成を行うほか、平成二十四年度は、新たな施策として、沿岸漁業での独立を目指す新規就業者に技術習得のための研修を実施する漁業協同組合を、鳥取県とともに支援し、将来を担う漁業者の確保を図ってまいります。
その他、昨年から始まったギンザケの海面養殖漁業は、四月の出荷に向け準備が進められております。さらに、数年休止されていた美保湾での放流事業については、美保湾地域栽培漁業推進協議会によりヒラメの放流を行うことが決定されており、このような「つくり育てる漁業」の拠点となる取り組みに対しても、支援してまいります。
また、「境港産クロマグロ」、「境港産水産加工品」のブランド化促進や、知名度向上にも引き続き取り組んでまいります。
昨年末に鳥取県が設置した「さかいみなと漁港・市場活性化協議会」におきましては、水産・観光業界の皆様と、漁港の整備・市場機能強化・食と観光との連携などについて議論を深め、水産業の振興に結びつけていきたいと考えております。

○農業の振興について
本市の特産白ネギにつきましては、栽培農家の減少と高年齢化により、栽培面積が減少傾向にありますが、白ネギは、本市の土壌に適し、野菜の中では単位当たり収入が比較的多い作物でありますので、産地の維持が図られるよう、引き続き、各種の農家支援を行ってまいります。
また、境港市農業公社を介して農地の貸し借りを進めるとともに、がんばる農家プラン支援事業等により、農家の経営改善の取り組みを支援いたします。
さらに、新規就農者へは、国の新制度であります青年就農給付金や鳥取県の就農条件整備事業等の活用により営農初期の負担軽減を図ってまいります。
「伯州綿」の栽培につきましては、境港市農業公社において、遊休農地を活用し、栽培サポーターが栽培する畑も含めて、二・三ヘクタールの畑で栽培する計画であります。
綿糸は、「弓浜絣」の原料にも供給し、境港市農業公社と鳥取県弓浜絣協同組合は、展示会、販路開拓の一部を共同作業で行い、伝統工芸品「弓浜絣」及び伯州綿製品の両方の認知度アップと販売促進を図り、地域資源「伯州綿」の活用による地域の活性化を目指してまいります。
なお、全国コットンサミットを本年十月に本市で開催し、国内の綿花生産者とメーカーの共同・連携の輪を広げ、生産、商品開発、販路開拓など、現在国産綿花が抱える課題の解決を図ってまいります。

○商工業の振興について
東日本大震災の影響や未曾有の円高など企業を取り巻く環境は厳しさを増しており、本市においても、経済情勢は依然として低迷しております。引き続き、国や鳥取県の金融政策と連携して制度融資の充実に努め、市内企業の経営を支援してまいります。
また、県内の厳しい雇用状況をふまえ、鳥取県雇用創造協議会が行う企業ニーズにあった人材育成研修を活用して、就職に結びつくように支援を続けてまいります。
企業誘致につきましては、国際定期航路を有する空港や港湾といった社会基盤をセールスポイントとして、鳥取県などの関係機関と連携を取りながら、市内への企業誘致を進め、地域経済の活性化、雇用創出に取り組んでまいります。

○中海護岸整備について
渡漁港の西側への移設工事は、国土交通省の斐伊川河川整備計画の中で、早期に整備が必要である箇所と位置づけられており、平成二十四年度より漁港の北側から工事に着手し、平成二十六年度中に完成する予定であります。
また、この工事と並行して本市が行う市道改良整備並びに既存漁港部分の埋立て工事につきましては、平成二十四年度までに用地取得や埋め立て免許の取得などの法手続きを完了し、平成二十五年度より本格的な工事に着手することとしており、平成三十二年ごろの完成を予定しております。
同じく早期に整備が必要である箇所として位置づけられている外江町の貯木場につきましては、国土交通省と所有者の間で整備方法についての協議が進められているところであります。

○境港の港湾整備事業について
境港は、昨年十一月、国土交通省より日本海側における機能別拠点港として、「原木取扱い」、「国際海上コンテナ輸送」並びに「外航クルーズ背後観光地」の三つの機能において選定されました。国による事業の選択と集中という方針が示される中で、新規港湾事業が重点的に行われる港として位置づけられ、本市が掲げる「北東アジアに向けた西日本のゲートウェイ」として大きくその一歩を踏み出しました。
「原木取扱い」関連につきましては、国の直轄事業として中野地区国際物流ターミナル整備が平成二十四年度予算で新規事業採択となり、整備に着手される見通しとなっております。
「国際海上コンテナ輸送」については、平成二十三年速報値で、外国とのコンテナ貨物量が過去最高となる一万八千四百三十六本を記録し、今後、さらなる増加が期待されることから、境港管理組合が昭和南地区の国際コンテナターミナル拡張事業に平成二十四年度から着手される予定と伺っております。
また、「外航クルーズ背後観光地」の分野においても、昨年十一月に境港を含むアジア地域の六カ国・九港でアジアクルーズターミナル協会が設立され、国際クルーズ船の誘致活動を共同で推進していくこととなり、平成二十四年度には、これまでにない数多くの国際クルーズ船の寄航が計画されているとお聞きしております。
このように、境港には大きな注目が注がれていることから、機を失することなく、地元はもとより、この圏域の経済発展・活性化に確実につなげていきたいと考えております。
そのためにも、今回、選定に至らなかった「リサイクル物流」「国際貨客船フェリー」の機能につきましても、選定されるよう、関係機関とともに圏域を挙げて要望活動を行ってまいります。

○夕日ヶ丘団地の市街化促進について
夕日ヶ丘団地の分譲につきましては、引き続き定期借地制度が好評で、平成二十一年六月の導入以来、二月末現在で六十三件の契約が成立しており、多くの方がこの制度を利用してマイホームを建築され、市街化の形成も順調に進んでおります。
また、住宅メーカーが夕日ヶ丘団地の事業用借地制度を利用してモデルハウスの建築に着手するなど、新たな動きも出てきております。
今後も、テレビコマーシャルや住宅メーカー・県人会などへのピーアール活動を通じて夕日ヶ丘団地と定期借地制度の周知に努めるとともに、商業施設の誘致につきましても興味を示される事業者に対して積極的に情報提供を行い、実現に向けて努力してまいります。
 
市民スポーツ広場に隣接する旧セルフミン生産協同組合跡地に計画しております墓地を併設した公園の整備につきましては、平成二十三年度に実施設計と土地開発公社からの用地取得を行い、平成二十四年度から二年かけて公園整備と墓地区画の一部造成工事を実施し、平成二十六年度の供用開始に向けて進めてまいります。

○公共下水道事業について
下水道整備につきましては、平成二十四年度は、境地区の栄町、本町、松ヶ枝町、京町、湊町、明治町を主に整備を進めるとともに、境港一号汚水幹線をJR境線の東側から線路を横断し西側の県道まで、また、上道一号汚水幹線は境高校の南から市道樋ノ上川線まで整備する計画としております。
これにより、平成二十四年度末の普及率は五十五%を見込んでおります。
雨水排水対策につきましては、大正町、明治町、馬場崎町、浜ノ町、蓮池町の整備を進めることとしており、平成二十四年度に基本設計を計画しております。
渡地区へは、平成二十四年度に境港二号汚水幹線の実施設計と渡中継ポンプ場の基本設計を、平成二十八年度までに幹線の整備を行い、平成二十九年度から、各家庭に向けた下水道の整備を進めていく予定としております。
また、下水道センターにつきましては、水処理施設への流入水量の増加にともない、処理能力を引き上げる必要があることから、増設工事の実施設計を平成二十四年度に行い、平成二十七年度には完成をしたいと考えております。
 
今後とも下水道の普及率促進のため、効率的な整備を行い、快適な生活環境の確保と公衆衛生の向上に努めてまいります。

○防災対策について
本市における防災対策につきましては、東日本大震災を教訓として、主に原子力災害対策と津波対策の見直しを進めているところであります。
原子力災害対策につきましては、昨年十二月二十五日に鳥取県、米子市とともに中国電力と安全協定を締結しました。
二月十六日には、島根原子力発電所事故を想定し、鳥取県、島根県、原子力発電所から半径三十キロ圏の周辺自治体などが参加する訓練が初めて実施され、初動対応や災害対策本部の運営などの手順を確認したところです。
さらに、原子力発電所における、従来の緊急時計画区域(EPZ)に代えて、新たに緊急時防護措置を準備する区域(UPZ)を設けるなどの原子力災害対策特別措置法の改正について、一月三十一日に国で閣議決定されたことを受け、鳥取県が島根原子力発電所の関係周辺都道府県になるとともに、本市が関係周辺市町村となる見込みであり、この改正を反映させた地域防災計画の見直しや避難計画などの取り組みを進めてまいります。
津波対策につきましては、民間のビル等を津波発生時の一時避難所として指定した後に、鳥取県津波対策検討委員会で示された浸水予測図を基にした新たなハザードマップを作成し、円滑な避難行動のための体制整備とルールづくりなど、ソフト面の対策も進めてまいります。
また、本年秋には鳥取県と共催で「地域防災フェスタ」を本市で開催することとしており、この中で住民参加による津波避難訓練も行う予定としております。
市民の安全・安心の確保は、最優先の課題として認識しており、今後も万全を期してまいります。

市民一人ひとりを大切にする教育と福祉の充実

○学校教育の充実について
学校教育におきましては、「心豊かでたくましい子ども」、「夢や希望を持ち、よりよく生きようとする子ども」を、引き続き本市のめざす「子ども像」として掲げ、将来に向けた「生きる力」を備えることができる教育の実践に努めてまいりたいと考えております。
このため、教育環境の整備とあわせて、「みんなでならいや地域の先生」をスローガンに学校・家庭・地域の連携を推進するとともに、小・中学校の連携を強めて「学力向上」や「心の教育」に取り組んでまいります。
少人数学級につきましては、これまでの小学校一・二年生での三十人以下学級、中学校一年生の三十三人以下学級に加え、鳥取県の方針に沿って、本市でも小学校三年生から六年生までと中学校の二・三年生でも三十五人以下学級とし、小・中学校の全学年で少人数学級を実施いたします。また、幼稚園、保育所、小・中学校、高校と校種の枠を超えた相互交流を図るスクラム教育のモデル事業を第一中学校区で実施するほか、引き続き、小・中学校に指導補助員を配置し、きめ細かで個に応じた指導を行ってまいります。
施設整備におきましては、第二中学校の校舎改築に着手いたします。本市が日南町阿毘縁に所有しております「市民の山」の木材を一部で使用するほか、ランチルーム、太陽光パネル、防災備蓄品を収納できるスペースを備えた設計にしており、平成二十五年夏の完成を目指しております。第三中学校につきましては、冷暖房設備改修に向けた実施設計を行うこととしており、平成二十五年度に完成いたしますと市内の小・中学校全てが冷暖房完備となります。
給食センターにつきましては、検討を重ねました結果、市の中心に位置し全小中学校への配送に適した第二中学校東側を建設予定地として、平成二十四年度に基本設計を実施し、平成二十七年度二学期からの稼働に向けて準備を進めてまいります。

○社会教育の充実について
公民館につきましては、避難所としての防災機能の充実を含め、市民が安心して施設を利用できるよう、年次的に耐震対策を実施しており、平成二十四年度は、誠道公民館の耐震診断、境公民館の耐震設計、中浜公民館の耐震改修工事等に取り組みます。
生涯読書の推進につきましては、図書館連絡協議会を中心に、読み聞かせ、朝読書、家読(うちどく)など、胎児から高齢者まで市民全体で読書活動が活発になるよう、努めてまいりたいと考えております。
市民図書館につきましては、太陽光発電システムの導入や老朽化した空調設備の省エネ改修工事が完了いたしました。今後も、多くの市民に利用していただけるよう図書館の環境整備に努めてまいります。
文化の振興につきましては、市民が気軽に芸術・文化に親しめる機会の提供に努めてまいりますとともに、本年は古事記編さん千三百年に当たることから、郷土出身の画家・小灘一紀氏の神話等をテーマにした展覧会と講演会を、境港市文化福祉財団とともに開催することとしております。
また、明治から戦前にかけて郷土から渡った北米移民につきまして、その先駆者である足立儀代松氏がカナダに最初に渡ってから本年で百二十周年を迎えることから、先人の功績を後世に伝えるため、カナダ、アメリカ移民の子孫との交流を計画しております。
体育の振興につきましては、関係者のご協力をいただきながら、市民全体で一層の健康増進をめざしてまいります。また、一昨年から始めましたロシア・韓国との駅伝事業についても継続するなど、「海と空の道」を活用した環日本海諸国とのスポーツ交流を一層推進してまいります。
なお、体育施設の管理運営につきましては、現在の指定管理者であります「境港市体育協会」と「境港スイミングスクール」を、平成二十四年度から三年間、引き続き指定管理者として指定いたすこととしております。今後のさらなる利用者サービス向上への取り組みに期待しております。

○子育て支援の充実について
地域住民一人ひとりが、意識的・意欲的に子育て支援に参加することで、地域の子育て機能を高め、社会全体で子育ての輪を広げていくため、引き続き「境港市次世代育成支援行動計画」の推進に取り組んでまいります。
予防接種につきましては、平成二十四年度も「ヒブワクチン・小児用肺炎球菌ワクチン予防接種助成事業」を継続して実施します。また、BCGについては、ヒブや肺炎球菌など個別の予防接種が増えたことで、集団接種のままでは接種計画が立てにくくなったため、医療機関で個別に接種していただけるようにします。
地域の子育て機能を高める取り組みとして、昨年四月に開設した「地域子育て支援センターひまわり」は、子育て家庭の支援拠点として順調に利用者が増えています。公民館においても本年度、乳幼児用のおもちゃやゲームが整備できましたので、今後、子育て家庭にとって公民館がより身近な施設となるよう取り組んでまいります。
保育所につきましては、年々保育ニーズが高まっている三歳未満児の受け入れ枠を拡大するため、外江と余子の二施設については、平成二十四年度に0歳児から就学前までの一貫保育施設に転用するための改修工事を行い、平成二十五年度から民間事業者に移管する予定としております。
今後も、小・中学校や地域の関係団体、社会福祉協議会などと連携を深め、「本市の宝」である子ども達のために、子育て支援の充実を図ってまいります。

○障がい福祉等の充実について
市内の就労支援事業所である「まつぼっくり事業所」「お菓子屋くれぱす」「F&Y境港」では、障がいのある方が、日中の作業・就労を通して、地域社会とのつながり、仲間とのふれあいなど、役立ち感を得ながら、生き生きと働いておられます。
今後も、障がいのある方が、自立した生活を送るための就労支援をはじめ、必要な時に相談できる体制の充実、交流の場を通じての社会参加の促進、障がいの種別や程度に関わらず必要な福祉サービスや支援を受けられ、できる限り住み慣れた地域でくらすことができる環境づくりに努めてまいります。
また、精神疾患治療による医療機関の受診者は、全国的に増加傾向となっています。
国の地域自殺対策緊急強化事業として、本市では平成二十一年度から三年間、精神疾患の理解と啓発のため、研修会や講演会に取り組んでまいりました。
全国での自殺者は平成十年から十三年連続で三万人を超えており、この緊急強化事業が、さらに三年間延長されることとなりましたので、平成二十四年度からの新たな取り組みとして、教育委員会などと連携して、精神疾患の予防のために、考え方や行動の基盤を形成する思春期の子ども達を対象にした「いのちとこころをはぐくむプロジェクト」に取り組んでまいります。

○国民健康保険と介護保険について
国民健康保険費特別会計につきましては、平成二十四年度以降大幅な財源不足が見込まれることから、本市国民健康保険運営協議会に保険税の改定について諮問しておりましたところ、一月三十一日、協議会から「国民健康保険財政を健全に運営するためには、被保険者の経済的負担を考慮した上でなお、保険税の改定により保険税収入を確保することもやむを得ないとの結論に達し」一人当たりの保険税を平均十・二%引き上げることを適当とする答申をいただいたところであります。
国民健康保険制度は、国民皆保険の基盤をなすものですが、財政基盤が脆弱であるという構造的な課題を抱えておりますので、市としても、一般会計からの繰り入れを検討するとともに、国に対しては、全国市長会を通して、国民健康保険事業の財政基盤を強化するため国庫負担を拡充するよう、繰り返し働きかけていく考えであります。
また、介護保険制度では三年ごとに事業計画を見直すこととされており、二月二十二日の本市高齢者福祉計画・介護保険事業計画策定委員会において、平成二十四年度からの第五期事業計画案が了承されたところであります。
計画では、高齢者が住みなれた地域で、健康で生きがいをもち、安心して生活できるよう、介護サービス基盤の整備・充実を図るとともに、特に、健康づくりと介護予防の取り組みをはじめ、認知症対策、地域見守り支えあい体制の構築、保険給付の適正化などに重点的に取り組むこととしております。
さらにこの中では、今後三年間の介護給付費等の見込みをもとに、平成二十四年度からの六十五歳以上である第一号被保険者の介護保険料の設定を行っており、介護サービス受給者の増加や、財政安定化基金からの貸付金の償還分が加わることなどにより、月額基準額は、現在の四千五百六十七円から五千九百八十円に大幅な引き上げとなったところであります。
国民健康保険税のみならず、介護保険料の引き上げと、市民の皆様には大きな負担増となりますが、制度を健全に維持していく上で必要不可欠なものとして、なにとぞご理解を賜りますようお願い申し上げます。

 ○市民の健康づくりについて
市民の健康保持・増進を図るため、各種検診の定期的な受診により疾病の早期発見・早期治療を促進するとともに、市民が自分自身の健康に関心を持ち、正しい生活習慣を身につけていただけるよう、健康教育等に引き続き取り組んでまいります。
特に検診につきましては、五歳刻みの節目の年齢に達した方に、乳がん検診、子宮頸がん検診、大腸がん検診の無料クーポン券を発行し、検診の受診を促す「がん検診推進事業」を継続して実施します。
また、がん検診等の受診率向上に向けて、健康づくり地区推進員等とともに啓発活動を進めるほか、中学校一年生から高校一年生までと平成二十三年度に一回以上接種した高校二年生の女子を対象に「子宮頸がん予防ワクチン」の接種費用の全額助成を引き続き実施することとしております。



以上、本市を取り巻く状況並びに平成二十四年度に臨む市政運営の基本的考え方について、その概要を申し述べました。
 具体的な施策につきましては、予算案、その他の議案の提案理由で申し上げたいと存じますので、ご理解、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。





質問はこちらから