施政方針要旨(平成23年3月4日)

今期定例市議会において、平成二十三年度予算案をはじめとする諸議案をご審議願うにあたり、所信の一端を述べるとともに、主要課題等について基本的な考え方を申し上げ、議員各位並びに市民の皆様の一層のご理解とご協力をお願いするものであります。
 急速に進む少子高齢化や人口の減少、景気の低迷に伴う税収の落ち込み等、地方を取り巻く環境は依然として厳しいままであります。このような状況にあって、地域の活性化など地方が抱える諸課題をひとつの自治体で完結させることは容易ではありません。
私が、市政運営の柱に掲げる「連携と共栄」は、周辺自治体との、より広くより強い連携を築きあげ、圏域がひとつのまちのように一体となる中で、それぞれが役割を果たしながらともに繁栄していくことを意図するものであり、本市が有する「港湾」や「空港」を圏域共通の財産として利活用していくことは、この考えを進めていく上で大きな鍵となります。
 とりわけ「港湾」は、広範な背後圏と利活用があってはじめてその機能が活き、圏域の発展に資するものであります。
 国は、対岸諸国との交流促進の観点から、「日本海側拠点港」を本年夏に指定することとしておりますが、私は韓国の東海・ロシアのウラジオストクと本市を結ぶ環日本海定期貨客船の安定運航は、拠点港指定への力強い追い風になると確信しております。
 「北東アジアに向けた西日本のゲートウェイ」を目指す境港にとって、拠点港の指定は、この圏域の将来を占う極めて重要な事柄であります。この指定に向けて、中海市長会をはじめ圏域が一丸となり鳥取県や境港管理組合と連携し全力で取り組むとともに、日本海に拓けたこの航路を将来に向けてより確かな「海の道」とするために、引き続き圏域を挙げて支えていかなければなりません。
 国際定期便の就航する米子鬼太郎空港とあわせ、これらの社会基盤を核として「北東アジアに向けた西日本のゲートウェイ」という大きな目標に向かって着実な歩みを進めてまいります。
対岸諸国と日常的に人の行き来ができる日は、遠い未来の話ではありません。そうなれば、強い力を持った他の地域と伍していかねばならず、圏域の発展には、より広くより強い連携が欠かせません。
 そのためにも、社会基盤の利活用のほか、観光や産業などあらゆる角度から一層の連携促進を図り、圏域の活力を高めていく必要があると考えております。
また一方では、本市の基幹産業であります水産業の振興や夕日ヶ丘の開発に伴う債務の解消など、山積する課題の一つひとつに真正面から取り組むとともに、市民の皆様の生活に根ざした施策もしっかりと進めてまいります。
 特に、出産や子育てに関する施策の展開には、引き続き重点をおきたいと考えております。
 あわせて、市道側溝や下水道など生活基盤の整備も着実に進め、市民生活に密着したサービスの堅持と喫緊課題への適切な対応により、ハード・ソフト両面から「安全で安心、そして快適な市民生活」の伸展を図り、オアシスのように人や物の活発な往来と活気あふれるまちづくりに邁進する決意であります。

規律ある行財政運営と協働の推進

○平成二十三年度予算案について
本市の財政環境は、厳しい経済情勢の影響で自主財源の根幹である市税収入が低迷し未だその回復軌道は見えず、また歳出においても、社会保障関係費が大幅な自然増となることや公債費が依然高水準であることなど、義務的な経費の負担が増し、大変厳しい状況であります。
このような状況を踏まえ、平成二十三年度の予算編成は、従来の方針どおり、規律ある財政運営を念頭におき、歳入規模に見合った予算の編成を基本としながらも、地域の活性化を図るための諸施策や喫緊の課題には時機を失することのないように、予算編成したところであります。
具体的には、市民生活に密着した現状の事業等は堅持した上で、事務を行うために必要な経常的経費を一%、継続的な政策的経費を五%、ともにマイナスシーリングを実施し、経費の節減合理化に努め、歳出規模の圧縮を図ったところであります。
その一方で、これまでも重点的に取り組んでまいりました「教育」や「子育て支援」といった分野では、第二中学校の改築に向けた取り組みや、特別医療費助成制度の対象年齢の拡充など、さらなる充実に努めるほか、「企業誘致」や「観光」といった分野においても、地域の活性化や地域経済の振興に向けた新たな取り組みに対して予算の配分を行ったところであります。

○協働のまちづくりの推進について
「自分たちのまちは、自分たちで考え、自分たちでつくり上げる」、このことがまちづくりの原点であります。
 平成二十二年度における協働のまちづくりの例として、外江地区での「ケヤキ並木の保存に向けた清掃活動」があります。地域ぐるみで取り組まれ、絆が深まったと聞いており、平成二十三年度以降も継続されると伺っております。
また、芝生化事業につきましては、PTAや地域の皆様にご協力いただきながら、これまでに小学校七校、中学校一校のほか、中浜サントピアグラウンドで実施してまいりましたが、引き続き、深田川一号公園や渡緑地でも、利用者や地域の皆様との協働事業として取り組むこととしております。 
 自治会は、協働のまちづくりを進めていく上で、最も基本的な団体でありますが、近年、人口減等のため自治会への加入者が減少してきており、それによる財政事情を考慮し、平成二十三年度、自治会協力報償金を増額したいと考えております。
 市民と行政が互いの立場を尊重し、それぞれが果たすべき役割と責任を分担しながら住みよいまちをつくっていくため、今後も引き続き協働のまちづくりの取り組みを進めてまいります。

経済の活性化と都市基盤整備

○環日本海交流の推進について
環日本海定期貨客船の境港への寄港が、昨年九月末から週一便に変更されて以降、一便あたりの旅客数は、前年同期に比べて倍増しているものの、旅客の大部分を韓国人が占め、日本人の利用が極めて少ない状況にあります。
平成二十三年度におきましては、スポーツなどを行う市民団体が、環日本海諸国で開催される各種大会に参加する際の渡航費用を一部助成することにより、環日本海定期貨客船、米子―ソウル便の日本人利用者の増加を図るとともに、航路を利用した地域間交流の活性化に取り組んでまいります。
また、一般旅券(パスポート)の申請や受領に際しましては、これまで、鳥取県西部総合事務所まで足を運んでいただいておりましたが、市民の利便性の向上を図るため、平成二十三年四月一日より鳥取県から権限の移譲を受け、本市の窓口でも旅券交付事務を行うこととしました。
なお、パスポートを交付する際は、環日本海定期貨客船や米子―ソウル便などの資料提供もあわせて行い、市民の皆様の利用促進を図ってまいりたいと考えております。
貨物につきましては、ロシア向けの貨物は増加傾向にあるものの、依然として境港・東海間とウラジオストクからの貨物量が伸び悩んでおります。
国や鳥取県では、昨年十一月に実施された北海道産水産物の韓国へのトライアル輸送の結果をもとに検証を行うとともに、中国東北地方など他の地域からの貨物の確保に向けた検討がされております。
本市におきましても、航路の安定運航に向けた独自の取り組みとしまして、環日本海定期貨客船を利用する外資系企業の事務所開設経費の一部助成を行い、市内への企業進出を促進することにより貨物や旅客の増加を図るとともに、地元企業のビジネスチャンスの拡大につなげてまいりたいと考えております。
地域間競争が活発化する中、韓国、ロシアと日本を結ぶ国内唯一の国際定期貨客船航路のメリットを十分に活かし、北東アジアのヒト・モノが行き交う「環日本海オアシス都市」の実現をめざしてまいります。

○中海圏域の連携について
平成二十二年三月、境港市、米子市、松江市、安来市、東出雲町の四市一町が策定した中海振興ビジョンには、圏域の強みを活かした三つの方向性を掲げております。
一つは、「北東アジアから世界へつながる西日本のゲートウェイの構築」であります。
境港は、中海圏域共通の財産であるとの認識が四市一町で形成でき、環日本海定期貨客船への支援を共同で取り組み、同航路の安定運航に寄与するなど成果をあげているところであります。
二つ目は、「中海をはじめとする豊かな自然と人が織りなす調和の実現」であります。
環境をテーマに、二月十六日、中海市長会シンポジウムを開催しました。
境港市の小学校の太陽光発電設置事業、廃食油を精製し、ごみ収集車の燃料として再利用している取り組みなど、構成市の環境問題に関する取り組みがそれぞれ紹介されたのち、パネルディスカッションの中で、私は、中海を守るには、斐伊川、宍道湖、中海という斐伊川水系全体での連携した取り組みが必要であり、行政、市民、団体の協働の取り組みが大切であって、そのような姿勢を強く情報発信していくことが、観光振興やまちづくりにもつながっていくということを申し上げ、他の市長からも同様の意見があったところであります。
三つ目は、「自然、人材、技術の連携による世界に誇る中海ブランドの創出」であります。
これには、中海圏域産業技術展への支援、JR境港駅と松江市方面を結ぶバスの運行実験などに取り組んできたところであります。
平成二十三年度におきましても、中海圏域定住自立圏形成協定に基づき、引き続き、公的病院への支援や中海圏域産業技術展への支援を行うとともに、新たに電気自動車と急速充電器の導入などを行い、圏域全体の生活機能の強化や産業基盤の整備、自然と調和した社会の構築を図ってまいります。
中海圏域の四市一町が互いに補完しあいながら、あたかもひとつのまちのように機能し、さらには出雲圏域との連携を視野に入れながら、より広範でより強い圏域の実現を目指してまいります。

○観光振興について
昨年は、連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」の放映を追い風に「水木しげるロード」の年間観光入込客数は、三百七十二万人を超え、これまでの最高記録の二倍以上に達したところであります。
この状況を一過性に終わらせないためにも、昨年十月から、今後の新たな観光戦略を総合的に練ることを目的に、「境港市観光振興プラン」の策定作業を進めております。現在、観光関係者等による検討委員会においてご議論をいただいており、平成二十二年度末の完成を予定しております。
なお、このプランで検討されている「水木しげる記念館」のリニューアル、「河童の泉」のライトアップ、夏休み期間中の市内観光施設を結ぶシャトルバス運行など、すみやかに事業化すべきと判断したものにつきましては、平成二十三年度当初予算案に新規事業として盛り込んだところであります。
このほか、環日本海定期貨客船などを利用した外国からの誘客や受け入れ態勢の整備、中海圏域・隠岐・出雲などとのさらなる広域連携の推進、また、「新・ご当地グルメ」など本市の地域資源である「さかな」を活用した「食」の情報発信などに、引き続き取り組んでまいります。

○水産業の振興について
境漁港における平成二十二年の水揚量は、十一万八千トン余りで前年とほぼ同量だったものの、水揚金額は前年に比べ約七%減の百五十三億円余りとなりました。
水産業は、近年の魚価の低迷に加え、資源の減少、漁業就業者の減少と高齢化、漁船の老朽化、さらには、年末年始の大雪による漁船の被害など、さまざまな課題を抱えております。
このような状況の中で、漁業就業者対策として、沖合漁業に新たに従事しようとする漁船員の研修を行う企業への助成を引き続き行います。
また、新たな取り組みとして、沿岸漁業を新規に経営する際、大きな負担がかかる漁船や漁労用機器等の取得に協力する漁業協同組合に対して、鳥取県とともに支援をしてまいりたいと考えております。
さらに今後、日本海のクロマグロの適正な資源管理が実施される中で、「境港産クロマグロ」の ブランド化を促進し、知名度の向上、販路拡大、さらには観光との一層の連携も目指してまいります。
平成二十一年度から始められた「みんなで選ぶ境港の水産加工大賞」により、評価が高まっている境港の水産加工品につきましても、企業の新商品開発や、業界を挙げた販路拡大への取り組みに対し、積極的に支援してまいります。
「境港地域水産業構造改革推進プロジェクト」で提案のありました市場内への魚体選別機(セレクター)の設置が、平成二十三年度、鳥取県によって実施される見通しとなり、魚種別、サイズ別取引が可能になるとともに、荷捌き処理時間の短縮による鮮度向上と販売先の拡大などが図られ、懸案事項である魚価の向上につながることを期待しているところであります。

○農業の振興について
特産野菜である「白ネギ」につきましては、夏ネギについても大雪の影響が心配されておりますが、本市独自の施策として、緑肥作物や病害虫防除薬剤購入費、野菜価格安定資金の農家負担分の一部を補助し、農家を支援してまいります。
遊休農地の解消に向けては、引き続き、境港市農業公社を介した農地の貸借の促進、遊休水田を活用した学校給食米の試験栽培、草刈経費の一部を助成する農地適正管理費補助等を実施するほか、新規就農者や農業参入に取り組む企業等を支援してまいります。      
また、農業委員会と連携を図りながら、遊休農地の所有者等に対する指導を強化することとしております。
国からの「ふるさと雇用再生特別交付金」を活用し、平成二十一年度から取り組んでおります伯州綿栽培につきましては、平成二十三年度が交付金事業の最終年度となることから、平成二十四年度以降を見据えた事業展開を行う計画にしております。
まず、商品化に必要な収量を確保するため、栽培面積を二ヘクタールに拡大するほか、境港市農業公社では、平成二十二年度に行った栽培講座の受講者等を中心とした栽培サポーターを募集し、指定した区域内でそれぞれの能力に応じた面積を、種まきから収穫まで責任を持って栽培していただき、収穫した綿の量に応じて対価をお支払いする新たなモデル事業に取り組みたいと考えております。
さらに、平成二十三年度は販路開拓に重点を置いて取り組むほか、新生児や百歳になられる高齢者に伯州綿製品をプレゼントするなど、伯州綿の普及・啓発に取り組んでまいります。

○商工業の振興について
地域経済につきましては、円高やデフレの長期化による景気低迷が続き、家電エコポイント制度の縮小など国の政策効果の反動や大雪の影響などを受けて、「回復テンポが遅くなっている」状況であります。
本市においても資金繰りに苦慮する企業が少なくないことから、引き続き国や鳥取県の金融政策に対応して、市内企業の経営に必要な資金繰りを支援してまいります。
雇用情勢につきましては、依然として厳しい状況のまま推移しており、引き続き市民の雇用機会を確保するため、国の「ふるさと雇用再生特別交付金」や「緊急雇用創出事業臨時特例交付金」を活用した事業を幅広い分野で実施するとともに、米子公共職業安定所や鳥取県地域雇用創造協議会などと連携して、雇用の拡大、人材の育成、就業の促進に取り組んでまいります。
企業誘致につきましては、全国的に製造業の生産拠点が海外へシフトされる中で、自治体間での誘致競争が激化しておりますが、一月十二日に京都市に本社のある株式会社デュエラと鳥取県、境港市との間で、本市進出に関する協定を結んだところであります。
同社は、独自技術によるLED液晶テレビのバックライトなどに使用される高拡散反射シートを、主に韓国などアジア向けに製造するベンチャー企業で、西工業団地内に現地法人の株式会社DSコーポレーションを設立され、十月から操業を開始される予定となっており、地域経済の活性化や雇用の確保につながるものと期待しております。
本市では、引き続き鳥取県などと連携を図りながら積極的に企業誘致に取り組んでまいります。

○中海護岸整備について
国においては、昨年九月に策定した「斐伊川水系河川整備計画」に基づき、短期整備箇所として位置づけられた「渡漁港」の護岸整備について、本年夏の工事着手を目途に、現在、既設の漁港機能を西側に移設する詳細設計に取り組まれております。
また、昨年十二月二十日には、新たな漁港整備に必要となる用地の所有者に対して説明会が開催され、大方の了解が得られたことから、今後、用地測量を終えた後、土地売買契約の手続きを進めていく予定と伺っております。
本市におきましても、「渡漁港」の移設にあわせて実施する防災道路や内水排除施設の整備、既存漁港の埋立て整備などについて、昨年十二月七日に地元説明会を開催し、事業実施へのご理解をいただいたことから、漁港周辺における道路の基本設計等に着手したところであります。
平成二十三年度は、防災道路の詳細設計や用地測量、埋立て申請に必要な環境影響調査等を行うこととしており、引き続き地元と協議を重ねながら、国や鳥取県と連携を図り、事業を推進してまいりたいと考えております。

○境港の港湾整備事業について
昨年八月、直轄港湾整備事業の選択と集中を図るため、国が指定する「重点港湾」に境港が選定され、平成二十三年度予算に日本海側で唯一、「中野地区国際物流ターミナル」の事業化検証のための調査費が計上されたところであります。
また、一月には、循環資源の広域流動の拠点となる「リサイクルポート」にも、境港が追加指定され、今後、より効率的な海上輸送の実現、リサイクル施設の立地促進による臨海部を中心とする地域の活性化を目指し、官民連携による取り組みをより一層進めていきたいと考えております。
さらに、北東アジア諸国との航路の充実・強化が不可欠であることから、国は、「日本海側拠点港」の選定に向け、「日本海側拠点港の形成に関する検討会」を昨年十一月に設置し、二月には拠点港の候補として境港を含む二十六港湾を決めたところであり、本年夏を目途に選定結果をまとめる方針であると伺っております。
「北東アジアに向けた西日本のゲートウェイ」を目指す境港にとって、日本海側拠点港の指定を受けることは極めて重要であり、国に対して引き続き、指定に向けた要望活動等を積極的に行ってまいります。

○夕日ヶ丘団地の市街化促進について
夕日ヶ丘団地の分譲につきましては、定期借地制度が好評で、平成二十一年六月の導入以来、二月末現在で三十六件の契約が成立するなど、多くの方がこの制度を利用してマイホームを建築されており、市街地の形成が徐々に進んでおります。
また、定期借地制度のさらなる周知を図るため、一月には日吉津村にある大型ショッピングセンターの立体駐車場に広告看板を設置したところであります。
今後も、アパート等へのポスティングや関係団体等へのピーアール活動などとあわせ、商業施設の誘致にも引き続き積極的に取り組んでまいります。
市民スポーツ広場の隣接地に計画しております墓地を併設した公園の整備につきましては、平成二十二年度に都市計画決定や全体測量、基本設計が完了したところであり、平成二十三年度には実施設計や用地の取得を行うなど、公園工事と墓地区画の造成に向けて準備を進めてまいりたいと考えております。

○公共下水道事業について
下水道整備につきましては、平成二十二年度に認可拡大した区域の整備を進めるため、平成二十三年度から境港一号汚水幹線を大正川からJR境港駅前まで、上道一号汚水幹線を境高校の北側から南側まで整備する計画としており、平成二十五年度の完成を目指しております。
また、 平成二十二年度と同様に水木しげるロードを含む境地区を中心に整備を進める計画としており、これにより、平成二十三年度末の普及率は五十四%を見込んでおります。
境地区につきましては、平成二十八年度に整備を完了する予定としており、渡地区につきましては、平成二十四年度から平成二十八年度にかけて渡中継ポンプ場の整備を行った後、平成二十九年度から整備を行う計画としております。
雨水の排水対策につきましては、平成二十一年度から実施している中町雨水幹線の整備を引き続き行い、平成二十三年度に完了する予定としております。
なお、平成二十年度より準備を進めておりました米子市旭が丘団地につきましては、平成二十二年度に下水道管の接続工事が完了することから、平成二十三年度より汚水の受け入れ処理を行うこととしております。
今後も下水道の未普及地区の整備を推進し、快適な生活環境の確保と公衆衛生の向上に努めてまいりたいと考えております。

○安全・安心なまちづくりの推進について
安全・安心なまちづくりを推進していく上で、道路照明としての機能をあわせ持つ防犯灯の役割は大変重要であります。このことから、市道における防犯灯の設置や維持管理を市がすべて行っており、適切な対応に心がけているところであります。
しかしながら、防犯灯の設置要望は年々増えており、これに伴う維持管理費も増加傾向にあることから、本年度から鳥取県において制度化された「環境にやさしいLED照明導入推進事業交付金」を活用し、既存の防犯灯を、蛍光灯から消費電力が少なく耐久性が長いLED照明に交換する取り組みを進めております。
その一環として昨年、小・中学校の関係者や境港警察署、市の三者で構成する「通学路等の安全対策合同会議」において現地調査を行い、防犯灯の設置が必要と認められた三十四箇所のうち二十三箇所に、新たにLED照明灯を設置したところであり、残りの箇所については中国電力の電柱が設置された後に実施することとしております。
さらに、平成二十二年度に鳥取県の助成が確実となったことから、国の「きめ細かな交付金」も活用して、市道三路線にある既存の防犯灯百十基をLED照明灯に交換しているところであります。
犯罪抑止の観点から、平成二十三年度以降も年次的に整備を進め、市民生活のさらなる安全確保に努めてまいりたいと考えております。
また、年末年始の大雪の教訓と反省から明らかになった、除雪機械の不足や、大雪の際の初動体制、関係各機関との連絡体制のあり方など、さまざまな課題について、地域防災計画を見直し、除雪体制の強化を図ってまいります。

市民一人ひとりを大切にする教育と福祉の充実

○学校教育の充実について
学校教育におきましては、「心豊かでたくましい子ども」、「夢や希望を持ち、よりよく生きようとする子ども」を、引き続き本市の目指す「子ども像」として掲げ、子どもたちが「確かな学力」とともに「豊かな人間性と社会性」さらには「健康と体力」を培い、将来に向けた「生きる力」を備えることができる教育の実践に努めてまいりたいと考えております。
このため、教育環境の整備や教育施策の展開とあわせ、学校・家庭・地域の連携を推進し、総合的な教育力の向上を図ってまいります。
平成二十三年度においても、小学校一・二年生、中学校一年生における少人数学級制の採用、十九名の指導補助員の配置などによって、きめ細かな教育を実践していくことが主体となりますが、これに加え、「未来を拓くスクラム教育推進事業」としまして、小学校高学年への「一部教科担任制」の試験的導入などを含む、保育所から中学校までの連携強化を意図した事業の実施により、学力の向上や不登校児童生徒の出現率抑制等を図ってまいりたいと考えております。
また、平成二十二年度から上道小学校に「学校栄養職員」に代わり「栄養教諭」を配置していただいておりますので、平成二十三年度は、「栄養教諭を中核とした食育推進事業」を展開し、より一層の食育の充実を図ってまいりたいと考えております。
施設整備におきましては、平成二十二年度に実施しました小学校六校の耐震改修等に続き、平成二十三年度は、第一中学校の校舎の耐震改修と大規模改造、さらには冷暖房設備の整備に関わる工事を一括して行いますとともに、第二中学校の校舎改築に向けた実施設計を予定しております。
なお、第二中学校の校舎完成は平成二十五年夏を予定しており、完成しますと、本市の義務教育施設における耐震化事業は完了します。

○社会教育の充実について
文化の振興につきましては、引き続きサロンコンサートをはじめ、ピアノコンクール、ブラスフェスタ、シンフォニー少年少女合唱団の育成など、市民が気軽に芸術・文化に親しめる機会の提供に努めてまいります。
市民会館など文化施設の管理運営については、境港市文化福祉財団を平成二十三年度から三年間、引き続き指定管理者として指定することとしております。同財団により、市民の文化活動や利用団体の各種事業への支援が図られるとともに、適正な管理がなされるものと期待しております。
海とくらしの史料館は、魚やカニ等の剥製を多数展示し市民や観光客に喜ばれておりますが、一方で、暮らしをテーマとした漁具や漁法、農具や民具の説明展示など、本市の基幹産業である水産業をはじめ海と人々の関わりを学ぶことのできる施設であります。
リュウグウノツカイの剥製が新たに加わるのを機に、イベントや講演会を開催するほか、「境港市の誇る先人たち」を紹介するコーナーの設置や境海峡を中心とした古代史に関連する資料の展示、さらには国の史跡である台場公園とあわせ社会学習の一環として活用していただけるよう、周辺自治体も含めた学校等への情報発信などを行い利用促進を図ってまいります。
今後も、関係者や利用者をはじめ幅広い声に耳を傾け、海とくらしの史料館がより多くの方に親しまれる施設となるよう努めてまいります。
市民図書館につきましては、蔵書の整理や書架の入れ替え、視聴覚機器やインターネットを利用できるコーナーを設置するとともに、太陽光発電システムの導入や空調設備の改修を行い、利用促進を図ってまいります。
市史編さんにつきましては、平成十三年から十年間の行政史として「境港市五十五周年史」の編さんに取り組み、平成二十四年三月の刊行を目指します。また、市史編さん室に収蔵しております写真等の資料を整理し、デジタル化を進め、資料の劣化防止や利用者の利便性向上を図ってまいります。
体育の振興につきましては、より多くの市民に日常からスポーツを楽しみ健康増進につながるよう、体育指導委員や公民館を通じた地区体育スポーツの振興を図ってまいります。また、昨年から始まりましたロシアや韓国とのサッカーや駅伝の交流事業についても継続するなど、米子―ソウル便や環日本海定期貨客船の「空と海の道」を活用した環日本海諸国とのスポーツ交流を一層推進してまいります。

○子育て支援の充実について
地域住民一人ひとりが、意識的・意欲的に子育て支援に参加することで、地域の子育て機能を高め、社会全体で子育ての輪を広げていくため、引き続き「境港市次世代育成支援行動計画」の推進に取り組んでまいります。
子育ての経済的負担や、育児不安などを軽減するため、平成二十三年度は「hib(ヒブ)ワクチンなどの予防接種助成事業」、「地域子育て支援センターの充実」、「保育所における園開放の充実」、「子どもの遊び普及事業」などを実施してまいります。
特に、四月十日には、既存の「こども支援センター」に加え、旧ひまわり幼稚園を「地域子育て支援センターひまわり」として、新たに開設する予定としております。「ひまわり」では、土・日・祝日も開所し、休日の子育て家庭の新たな過ごし方を提供するとともに、子育てサークルや子育て支援団体が主体的に活動する場としても活用していただくことにより、新たな交流・親睦・支援の場となることを期待しております。
各保育所においても、園開放の日を増やし、電子ゲームなどに頼らない遊びの普及事業や食育推進などの事業と連携して、「地域における子育て拠点」としての役割を強めてまいります。
さらに、年々保育ニーズが高くなっている三歳未満児の受け入れ枠を拡大するため、保育所と幼稚園の合築園である外江と余子の二施設を、〇歳児から就学前児童までの一貫保育施設に転用して、平成二十五年度から民間事業者に移管する準備を進めてまいります。
また、現在、就学前の子どもに限定している小児の特別医療費助成制度を、鳥取県と協調して、四月一日から小・中学生まで大幅に拡充し、子育て家庭の医療費負担のさらなる軽減を図ってまいります。
これにより、中学校卒業まで医療費の自己負担額は、入院で一日千二百円、通院で一回五百三十円が上限となり、残りの全額を県と市が半額ずつ助成いたします。

○精神保健福祉と障がい者福祉の充実について
増え続ける精神疾患の中でも、特に「うつ病」の啓発や予防に力を入れておりますが、平成二十三年度におきましても、引き続き、地域や団体の会合に出向いての「出前講座」を実施するほか、講演会、研修会などを開催して、身体の健康とも密接なつながりのある「こころの健康」について幅広く周知を図ってまいります。
また、職場や学校など、社会での人間関係がうまく築けないために孤立してしまい、家の中に長い年月ひきこもる方も見られます。できるだけ早い段階で社会との接点を持てるような支援につなげるなど、精神保健福祉に対する市民の理解と啓発に努めてまいります。
また、障がいのある方には、障がいの有無にかかわらず個性が尊重され、地域の中で誰もが同じように暮らせるまちづくりを進めてまいります。
特に、平成二十一年度末で廃園とした旧台場保育所の施設を、社会福祉法人まつぼっくり事業所に有効活用していただくこととしており、四月からの事業開始に向け、現在、新たな就労支援施設としての改修工事が実施されております。
新しい施設では、複数の作業室を障がい特性に応じて利用することが可能となり、また厨房設備の活用などにより、就労支援体制のさらなる充実が図られます。
今後は、福祉活動の新たな拠点施設として、障がいのある方の日中活動の場が広がり、社会参加の機会が増えることはもちろん、地域との交流の輪も広がり、ボランティアをはじめ市民の方に幅広く利用いただくことによって、福祉のまちづくりが一層伸展することを期待しております。

○高齢者福祉の充実について
高齢者の方が、いつまでも生きがいを持って暮らせるように、高齢者のための福祉施策や介護保険の円滑な運営と介護予防を推進してまいります。
介護予防への新たな取り組みとして、要介護・要支援認定を受けていない六十五歳以上の全高齢者に対して「基本チェックリスト」を送付し、その回答から将来介護が必要な状態になる可能性の高いと思われる方を早期に発見して、介護予防事業を利用していただくよう働きかけてまいります。
また、平成二十年度から実施しております「認知症予防教室」は、平成二十二年度に市内全地区で開催することができ、教室が開催された地区では、認知症予防の自主グループが結成されております。平成二十三年度も引き続き実施するとともに、市民の皆様が活発に認知症予防に取り組んでいただけるよう、グループの支援に努めてまいります。
高齢者の生きがい対策として、市内三十六会場で開催されている「高齢者ふれあいの家事業」は、高齢者の方にとって地域における貴重な交流の場となっております。引き続き、境港市社会福祉協議会等と連携して、事業の充実に取り組んでまいります。
このほか、介護保険では三年ごとに事業計画を見直すこととなっており、現在の第四期計画の最終年度となります平成二十三年度には、事業計画策定委員会を設置して、平成二十四年度から二十六年度までの三年間を事業期間とする第五期介護保険事業計画を策定することとしております。

 ○市民の健康づくりについて
市民の健康保持・増進を図るため、各種検診による疾病の早期発見・早期治療を促進するとともに、市民が自分自身の健康に関心を持ち、正しい生活習慣を身につけていただけるよう、健康教育等に引き続き取り組んでまいります。
特に検診につきましては、一定の年齢に達した女性の、乳がんと子宮頸がん検診で実施している「女性特有のがん検診推進事業」を継続して実施するほか、新たに、働く世代である四十歳から六十歳までの五歳刻みの方を対象に大腸がん検診を無料で実施する「大腸がん検診推進事業」にも取り組むこととしております。
また、がん検診等の受診率向上に向けて、健康づくり地区推進員等とともに啓発活動を引き続き進めてまいりますほか、新たに、中学校一年生から高校一年生までの女子を対象に「子宮頸がん予防ワクチン」の接種費用を全額助成することとしており、定期的な検診と合わせた効果の啓発に取り組んでまいります。
 なお、子どもからお年寄りまで一貫した健康施策を推進するため、四月一日から、健康長寿課内においている健康推進室を、保健相談センター内の子育て支援課に移し、現在の健康長寿課を「長寿社会課」に、子育て支援課を「子育て・健康推進課」にそれぞれ変更することとしております。



以上、本市を取り巻く状況並びに平成二十三年度に臨む市政運営の基本的考え方について、その概要を申し述べました。
 具体的な施策につきましては、予算案、その他の議案の提案理由で申し上げたいと存じますので、ご理解、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。



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