所信表明要旨(平成20年9月3日)

  
 平成20年9月定例市議会が開催されるのにあたり、今後の市政運営についての所信の一端を申し上げ、議員各位並びに市民の皆様のご理解とご協力をお願いするものであります。

 
 竹安徹議員、佐名木知信議員におかれましては、このたびの市議会議員補欠選挙において、めでたくご当選されましたことを、心よりお慶び申し上げます。

 私も、再び市政の重責を担わせていただくこととなりましたが、無投票での再選という結果に、よりその責任の重大さを痛感いたしており、新たな気持ちで市勢進展のために全力投球してまいる所存であります。

 
 2期目の市政のスタートにあたり、このたびの市長選挙で掲げた公約を中心に、あらためて私の市政に取り組む基本的な考え方を申し述べます。


 私は、市長に就任以来一貫して申し上げておりますとおり、「公明正大」を政治理念に置き、真に市民の立場・視点に立った公平公正な市政運営に徹しながら、「市民と共に築く風格あるまち」をめざしてまいります。

その上で特に、「海と空の港」を活かした連携の強化による、地域の活性化に取り組みます。

境港市の最大の特性は、重要港湾、国際空港、特定第三種漁港を持っていることです。

これらは、ひとり境港市に限らず、中海圏域や山陰地方の将来にとって極めて重要な切り札となり得る大きな社会基盤です。その能力は、広範囲にわたる利活用があってこそはじめて発揮されるものでありますので、より広範な規模での「連携」の強化が不可欠です。

そこで、これまで以上に広い視点から本市の発展をとらえ、周辺のまちとの連携によって「海と空の港」の活用を強力に進め、共によりよい広域圏を創り上げ、圏域全体の繁栄をめざしていきたいと考えており、「連携と共栄」をキーワードに市政運営を推進して、将来へ夢と希望のもてるまちづくりに邁進いたします。


 そして、「市民と共に築く風格あるまち」に向けて、次の五つの重点施策に取り組みます。

すなわち、「1.連携強化による一体的発展」、「2.全国ブランドである『さかな』と『鬼太郎』を活かした経済振興」、「3.一人ひとりを大切にした教育と福祉の充実」、「4.安心で住みよい生活基盤の充実」、「5.市民との連携による誠実な行政運営」であります。



1.連携強化による一体的発展について


 日本海定期貨客船航路の開設や港湾整備など、境港と米子空港を核とする「北東アジアに向けた表玄関」への取り組みを進めるとともに、将来の道州制に備えるためにも、中海市長会を中心とした圏域連携事業など、地域特性を活かした周辺自治体等との連携強化による、地域の一体的発展をめざします。

具体的には次のような取り組みを進めます。


○日本海定期貨客船航路の開設と港湾整備の促進


 環日本海拠点都市会議での長年の悲願であった、境港と対岸を結ぶ日本海定期貨客船航路の実現性が高まっております。

この航路の実現は、中海圏域を中心とした広範な地域の活性化にとって、新たな起爆剤となり得るものであり、この機をとらえて、旅客船バースなどの港湾施設の整備を加速させるとともに、鳥取県や境港貿易振興会など関係機関と連携して、強力にポートセールスを行い、西日本一円からの積荷の確保と誘客に努めます。

また、中海圏域の各自治体とともに、外国人観光客の受け入れ態勢等の整備についても進めてまいります。


○市民レベルの国際交流の促進


 米子―ソウル便に加え、日本海定期貨客船航路の実現は、地域の国際化をさらに進めるものと期待されます。

 当圏域と対岸諸都市との人的交流が一層活発化するよう、行政や経済交流のみならず、市民が主体となって取り組まれている、文化・スポーツ交流、ホームステイ、語学講座や異文化交流イベントなど、多方面にわたる交流活動を積極的に支援し、圏域全体で促進してまいります。


○貿易振興組織の強化・拡大


 重要港湾境港は、当圏域共通の財産であります。周辺自治体に「境港は自分たちの港」としての認識をより深めていただくとともに、境港貿易振興会の組織の強化・拡大に努め、圏域一体となった利用促進体制によって、境港の能力がより一層発揮できるよう努めてまいります。

 また、環日本海経済活動促進協議会との連携を図りながら、ビジネスチャンスの創
出や企業の海外展開の支援に取り組んでまいります。


○高速道路網等の整備促進


 境港や米子空港などの社会基盤のより広範な利活用を可能にするには、道路交通網が不可欠です。

 特に、国道431号の渋滞による物流機能低下を懸念するところでありますが、この解消のための米子インターチェンジから米子北インターチェンジまでの高規格幹線道路の整備をはじめ、山陰自動車道、中国横断自動車道尾道松江線、米子自動車道の四車線化などの高速道路の整備、また、中海圏域の活発な都市間交流に資する道路交通網の整備を促進してまいります。


○中海圏域での連携事業推進と交流イベント促進


 将来の道州制に備えるためには、今からこの圏域が一つのまちとして機能するように一体感を醸成していく必要があります。

 中海市長会では、先月開催したシンポジウムをはじめ、圏域を一体的に結びつける事業を引き続き実施してまいりますが、従来から民間を中心に様々な団体が活動する大山から中海、宍道湖にまたがる当圏域の中で、中海市長会として、情報の共有化や発信、団体間のコーディネートができるよう組織体制を強化しながら、さらなる連携に向けた取り組みを進めてまいります。

 また、スポーツや文化の分野においても、中海を中心とした各種大会等が実施されており、今後も一層多くの圏域住民が交流する多様なイベントの開催を促すことによって、圏域の一体感を高めてまいります。


○鳥取県西部広域行政をめぐる諸課題の解決


 鳥取県西部広域行政管理組合をめぐっては様々な課題がございますが、特に、可燃ごみ処理問題につきましては、私から、それまで進められていた新焼却施設の建設計画を見直して、現有施設の有効活用を問題提起させていただいたところ、米子市におかれまして、米子市クリーンセンターの活用に関し地元協議を重ねられた結果、先般、一部の町の可燃ごみに限り暫定的に受け入れることが表明されたところであります。

社会情勢が大きく変化している中、新たな焼却施設建設は、圏域市町村に多大な財政負担を伴うものであり、でき得る限り過大な投資を行わない形で住民ニーズに対応していく必要があります。

組合における諸問題に対しては、西部圏域全体としてよりよい方向に向かうよう、副管理者として他の構成市町村とともに努力してまいります。


 また、広域行政に関連して、本市では、米子市から要請のあった大篠津町「旭が丘団地」の下水を、本市下水道センターで受け入れる方針で、現在手続きを進めているところであります。このように、圏域共栄の観点から広域的対応が可能な事案については、行政区域にとらわれず連携していくべきものとして、今後とも対応してまいりたいと考えます。




2.全国ブランドである「さかな」と「鬼太郎」を活かした経済振興について


 年間150万人もの入込のある水木しげるロードを活用して、「鬼太郎」に特化した本市のピーアール戦略を進めるとともに、水揚げ日本一の「カニ」など、「さかなのまち境港」を活かし、基幹産業である水産業をはじめ、その他の産業との相乗効果を高めることによって、産業の振興を促進します。

具体的には次のような取り組みを進めます。

○境港ブランドの積極的情報発信


 水木しげるロードや境漁港の水産物に代表される本市の地域資源を最大限活用するとともに、妖怪にちなんだイベントをはじめ、境港ならではの「海鮮丼」や「マグロ料理」などを通して、全国に向けて「さかなと鬼太郎のまち境港」を積極的に情報発信し、本市の一層の認知度アップを図ってまいります。


○水木しげるロード周辺の環境整備


 入込客が開設以来1千万人を突破した「水木しげるロード」につきましては、訪れる観光客に対する「もてなし」の向上や、繁忙期におけるトイレや駐車場等の受け入れ態勢の充実を図るとともに、ロードを中心とした面的な発展方策など、さらなる魅力度アップに向けて模索してまいります。また、ロードと市内の各観光スポットを結ぶ交通ネットワークの構築に取り組み、観光客の利便性の向上を図ります。


○企業誘致と雇用の創出


 本市の雇用情勢は、基幹産業である水産業の低迷等に伴い、大変厳しい状況であります。

企業立地や産業振興による「働く場の創出」は喫緊の課題であり、企業誘致の実現に向け、今回新たな条例を制定して、企業立地促進策の拡充と雇用促進奨励金の創設など、本市独自の優遇策を打ち出すことによって、ホテルの誘致を含めた本市への企業立地と、市民の雇用機会の拡大を強力に進めてまいりたいと考えております。

○水産業構造改革推進プロジェクトの促進


 本市水産業を取り巻く環境は、周辺水域の資源状況の悪化や、慢性的な魚価の低迷など、深刻な状況が続いております。

 そのような中、水産業界では昨年度から「境港地域水産業構造改革推進プロジェクト協議会」を立ち上げ、地域と一体となって、漁獲から加工、出荷に至る産業構造を改革し、コストの削減や収益性向上をめざす改革計画の策定に取り組まれているところであります。

 市としましても、このプロジェクトは水産業のみならず、関連産業を含めた本市全体の振興につながる大きな機会と考えており、事業者の積極的な取り組みに対して、国や鳥取県と協調しながら支援してまいる考えであります。

 
 また、昨今の漁業用燃油の高騰対策として、漁船漁業経営に対する緊急支援を行う新たな予算措置について、今議会に提案いたしているところであります。



3.一人ひとりを大切にした教育と福祉の充実について


 次代を担う子どもたちの安全・安心を確保するため、境二中の建替えをはじめ、小・中学校の耐震補強等を早急に実施して教育環境を整えるとともに、生涯学習を進め心豊かな人と文化を育成します。

子育て支援に引き続き取り組み、安心して子どもを産み育てられる環境づくりを進めるほか、高齢者や障害のある方などを市民みんなで支え合いながら、健康で安心して暮らせるまちをめざします。

具体的には次のような取り組みを進めます。

○学校教育の充実


 学校教育においては、人間の尊厳を大切にすることを基本に、引き続き、本市の教育目標としている「心豊かで、たくましい子ども」、「夢や希望を持ち、よりよく生きようとする子ども」の育成をめざして、教育環境の一層の充実を図ってまいります。

特に、施設整備においては、昨年度全義務教育施設で実施した耐震診断の結果を踏まえ、平成21年度から5か年をかけて、小・中学校施設の耐震化を進める計画であります。

計画では、誠道小学校と第三中学校を除く、小学校6校と第一中学校について耐震補強を行い、最も老朽化している第二中学校については改築する考えであります。この耐震化と併せ、すべての小・中学校について施設の老朽化に伴う改造工事等を行い、事業費は、中学校の冷暖房施設の整備、給食センターの新設を含め、総額として約四十億円を見込んでおります。


 また、中浜小学校のスクールバスにつきましては、昨年度の試験運行の結果を踏まえ、関係者の方々と協議を重ねてまいりましたが、夕日ヶ丘地区周辺の1年生を対象に、運行期間を12月から3月の3か月間として、本年度から本格実施したいと考えております。


○生涯学習活動の推進


 より多くの市民に芸術・文化に親しむ機会の提供に努めるほか、スポーツや運動による健康増進など、文化やスポーツを通した生涯学習活動の推進に取り組みます。

特に、「生涯読書」を本市のまちづくりの柱として進めており、親子の読み聞かせ教室やブックスタート、小・中学校や高等学校における朝読書、読書活動推進大会など、胎児から高齢者まで、生涯を通した読書活動を引き続き推進します。


○子育て支援の総合的推進

 子育て支援施策の推進にあたっては、「地域の中で安心して子どもを産み、子育てができる環境を整える」ことを目標に、子育て世代への経済的支援をはじめ、ブックスタートとその関連事業の充実などの「親子関係づくり」を促す施策、延長保育や一時保育等の多様な保育サービスの提供などを、関係者との連携により総合的に推進してまいります。

○地域医療体制の維持向上


 済生会境港総合病院では、医師不足等により、救急患者の受け入れ制限や入院病床の削減を余儀なくされており、市民が安心して医療を受けられる体制を守ることが難しくなってきております。

済生会病院を中核とする地域医療体制の維持向上のため、引き続き国や鳥取県に対して抜本的な医師不足対策を要望してまいります。




4.安心で住みよい生活基盤の充実について


 夕日ヶ丘の環境整備を中心とした定住促進に努めつつ、米子空港整備関連事業の促進、公共下水道をはじめとする快適な生活環境の整備、さらには防災体制の整備等を進め、安心で住みよい生活基盤の充実をめざします。

 具体的には次のような取り組みを進めます。

○夕日ヶ丘への商業施設等の誘致、親水公園の整備

 
 夕日ヶ丘につきましては、引き続き商業施設や利便施設の誘致に努めるとともに、かねてから苦情の多かった悪臭などの環境改善を図るため、隣接する事業所の用地を取得し、親水護岸や公園などとして整備することを通して、一層の市街化の促進につなげてまいります。

○米子空港整備地域振興計画事業の実施

 米子空港滑走路延長事業に伴う地域振興計画につきましては、平成19年度末現在で進捗率が50.3%となっておりますが、今後も引き続き事業の優先度等を精査し、鳥取県と連携して実施してまいります。

 また、市道外浜線の迂回箇所の歩道整備につきましては、米子市と十分協議しながら、早期に完成するよう努めます。

○公共下水道の整備促進

 本市における公共下水道の普及率は、平成19年度末時点で45.6%となっており、平成23年度末には、境地区の大正川東側までと上道地区の整備を図り、54.0%の普及率を見込んでおります。

 また、近年の気候変動などにより、集中豪雨の頻度が高まっておりますが、浸水対策として、雨水幹線の整備も進めてまいりたいと考えており、今後も、市民の生活環境の改善と公共水域の水質保全を図るため、公共下水道の普及促進に努めてまいります。

○遊休農地の解消

 遊休農地につきましては、本年度中に、耕作が放棄されているすべての農地を対象に現地調査することとしており、この調査により、農地の実態を的確に把握し、特に農業利用のできる農地について、それぞれの農地の状況に応じた解消計画を立て、遊休農地の解消に取り組んでまいります。

○防災体制の整備

 普段からの人々の交流を通じた「自分たちのまちは自分たちで守ろう」という住民活動は、地域の防災力を高め、安全で住みやすい地域づくりを進めるうえからも大変重要であると考えております。

災害時などに高齢者や障害のある方などの安否確認や避難誘導が迅速に行われるよう、隣近所の支え合いによって援護が必要な方を支援していく体制づくりや、自主防災組織の育成強化など、地域ぐるみの防災力向上に向け、防災体制の整備に取り組んでまいります。

 また、鳥取県西部地震や、その後も各地で頻発する地震の教訓を活かし、震災における被害から市民の生命と財産を守るため、本年策定した「境港市耐震改修促進計画」に基づき、建築物の耐震化を促進してまいります。

○渡漁港の整備

 大橋川改修に伴う中海の護岸整備計画の中で、特に渡漁港の護岸整備につきましては、国土交通省から、水門設置や護岸嵩上げによる参考案が示されているところですが、現在、事業主体や事業着手時期等の詳細について、国、鳥取県と協議を進めているところであり、できるだけ早い時期に、地元説明を行い、事業着手につなげてまいりたいと考えております。



5.市民との連携による誠実な行政運営について


 行政情報を市民に分かりやすく積極的に提供しながら、市政への市民参画を進め、協働の気風があふれるまちをめざします。

行政改革に引き続き不断に取り組み、規律ある行財政運営を進めながら、時代に即した行政需要には的確に対応してまいります。

具体的には次のような取り組みを進めます。


○協働のまちづくりの推進


 「協働のまちづくり」は、市民の間で「自分たちの住むまちは自分たちで考え、自分たちで創り上げていく」という住民自治の原点に立ち返り、市民と行政が互いに協力し合ってよりよいまちにしていく、そういった気運のあふれたまちにしたいとの思いから、市政運営の柱にすえて取り組んでまいりました。

 この視点は、市民と行政との「連携と共栄」にほかならず、今後も引き続き推進していく考えであります。

○行財政改革の不断の継続

 時代が早い速度で大きく変化する中で、市民の負託に応えていくためには、行財政改革は不断に続けることが必要であります。

職員一人ひとりが改革の意識を持ち、事務事業の簡素・効率化に取り組むとともに、常に市民ニーズの把握に努め、市民の目線で既存事業の「見直し、統合、廃止等」を適正に判断し、事業の拡充、新規事業導入の財源確保が図られるよう、引き続き行財政改革に取り組みます。

 また、今後も、毎年度「財政見通し」を作成して本市の財政情報を公開するほか、昨年度策定した「中期財政計画」に則り、身の丈にあった財政運営による「自立・持続可能な財政基盤の確立」に、引き続き取り組んでまいります。


○市民に分かりやすい行政

 行政情報の積極的な開示と説明責任を果たす取り組みがなければ、行政に対する市民の関心も信頼も高めることはできません。分かりやすい広報に努めることは、行政が果たすべき重要な役割であり、協働のまちづくりを進める上でも、常に心がけなければならないと考えます。

 特に、市民にとって最も身近な広報媒体である市報については、あり方を含め内外から広く意見を求める機会を設けるなど、一層分かりやすい紙面構成に努めてまいります。


 以上、2期目の市政に臨む基本的な考え方を申し述べました。議員並びに市民各位の一層のご理解とお力添えを賜りますよう、重ねてお願い申し上げ、私の所信の表明といたします。









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