平成18年10月定例記者会見

市長説明

1.北朝鮮制裁措置(入港禁止等)にかかる支援要望について
 去る10月25日(水)に国に対して、境港水産振興協会とともに要望活動を行なってきた。国の方は農林水産大臣、水産庁長官に要望を行なった。本県選出の常田参議院議員、赤澤衆議院議員にもご同行いただいた。
 要望事項については、5点について要望した。
 1点目は、経済制裁に伴い影響のある生産者と水産加工業者に対する抜本的な金融対策を講じられたいということ。北朝鮮水域には3隻の漁船が入っていたが、この3隻で本市のベニズワイガニの水揚げのおよそ3分の1を占めている状況で、原料の確保あるいはその水域で操業できなくなることに対し、これらの業者に無担保、無保証、無利息の融資をお願いしたいというもの。
 農林水産大臣の方からは、無利息の点については可能な限り低利なもので実行を考えたいという返事があった。無担保、無保証ということについては要望に沿うような形で努力をしていきたいという回答があった。
 2点目は、北朝鮮海域での操業漁船に対する支援対策の促進を要望した。この3隻については、経済制裁に伴いこの海域から撤退しないといけないということで、これに伴う補償の道はないのかということを申し上げた。
 この点については、国の方で業界全体でよく話し合いながら模索していきたい、というご回答をいただいた。
 3点目は、資源回復計画に基づくベニズワイガニの休業期間の見直し対策の促進ということ。昨年まで休漁期間を2カ月としていたが、さらに資源保護の観点から本年から3カ月にしたところである。北朝鮮の水域から撤退する3者もこの日本側の漁場に参入する訳であり、これまで9カ月の間に12隻で操業していたところに15隻で操業することで、資源回復計画そのものに狂いが生じてくるのでないか、こういった対策も国においてしっかりしていただきたいとお願いした。
 これについては、深刻な問題であると認識しており皆様と相談しながら実情を踏まえて対応していきたいという回答をいただいた。
 4点目は、日本海沖合域における国が主体となった新しい漁場整備事業の創設をお願いする要望も行なった。
 例えば、マツバガニについてはそういった漁場を造成して対応しているが、同じようにベニズワイガニについても漁場を国において造成していただきたいという要望だが、ズワイガニと違ってベニズワイガニは水深がかなり深いこともあり、関係者と技術的にどういった問題があるのか、よく協議しながら検討していきたいという回答をいただいた。
 5点目は、代船の建造対策の促進ということだが、現在のカニカゴ漁船はいずれも建造から20年以上経過しており、老朽化している。こういった漁業環境の大変厳しい中で自前で新造船を建造することは大変困難であり、これに対し例えばリース方式といった制度を国の方で作っていただきたいと要望した。
 大臣の方からは、これは一境港ということではなく、全国の漁船漁業がかかえている共通した大きな問題であるので、国としてもそのことには対応していきたいとの回答をいただいた。
この5点については、水産振興協会で組合員等と話し合いをもたれて、こういった5点に絞られ、私ども行政も業界ともども要望に行ったものである。

2.第12回環日本海拠点都市会議について
 10月19日から21日まで、韓国江原道の東海(トンヘ)市で開催されたもので、韓国からは東海市と束草(ソクチョ)市、中国からは琿春(フンチュン)市、延吉(エンキチ)市、図們(トモン)市の3市、日本側からは境港市、米子市、浜田市、そして今回は鳥取市もオブザーバーとして参加した。ロシアのウラジオストックは欠席だった。
 会議のテーマは、「環日本海経済交流の実践」ということで、各都市が考え方を述べ、意見交換した。
 私から提案したのは、1.静脈物流を活用した環日本海圏域における経済交流の拡大ということが一つ。これは、静脈物流というのは、人間の血管に例えて、消費者に使われたものを再資源化して流通させるのをとらえていうが、そういった静脈物流の拠点として、境港から中国、韓国などの対岸諸国に向けて資源になるものを送り、向こうで製品化してまた境港に輸入するといったイメージだが、そういった経済交流の拡大を提案したところである。
 そして、2.日本海横断航路、これは来年の4月からロシアのトロイツァ(旧ザルビノ)と韓国の束草、そして日本の新潟港を三角に結ぶ航路がいよいよ動き出す訳であり、その航路の中に境港もぜひ参入したいと申し上げた。これについては、この航路での出入りの貨物の確保が大きな課題だが、そういった努力をして参入したいと申し上げた。
 もう一つは、3.対岸の各都市の観光資源を活かした人的あるいは観光交流を推進すべきでないかということを申し上げた。
韓国束草には雪獄山(ソラクサン)という有名な山があり、中国には長白山という大変著名な山がある。私どもも大山を抱えており、そういった資源を活用して観光交流あるいは人的な交流が促進できないかということも提案した。
 そして、束草市長とは個別に時間をとり、束草市長からは、水産都市としての相互の協力が何かできないか、水産の技術の交流というものもできないかとの提案があった。境港からも、束草は日本海横断三角航路の寄港地なので、境港もその航路の寄港地の一つとして参入することについても協力をお願いした。


1・2ページ(北朝鮮制裁措置にかかる支援要望について)[pdf:20KB]

3ページ(第12回環日本海拠点都市会議について)[pdf:16KB]

質疑応答

【記 者】あらためて今回、国に要請に行かれて、回答をどのように受け取っているか。
【市 長】経済制裁が発動されたことによって、影響が生じるのは境港だけでなく、全国的な問題である訳だが、影響が出るものには国としてもしっかり支援していくことは当初から国の方針として示されていたことであり、今回要望した内容にはいずれも、できる限りの対策を講じ支援したい旨の回答をいただき、水産振興協会ともども心強い感じを受けて帰ってきた。
【記 者】今後の市として現時点で考えられる取り組みとか、新たに国に対するアプローチを何か考えているか。
【市 長】1点目に挙げているが、金融対策については、片山知事も支援できるものについては対応したいという考えを示されており、市も連携してこういったことに対応したいと考えているし、あとは国と直接業界等とで具体的な話がこれからなされると思うので、我々としてもしっかりと受け止めて後押しをしていきたいと思っている。
【記 者】金融面では運転資金などになると思うが、市としては県と連携して取り組んでいくということか。
【市 長】そう。
【記 者】その具体的な時期は。
【市 長】県の方と細部について調整はまだできていない。
【記 者】行政としては、手法として利子補給をするということになると思うが、応分の負担をする考えがあるということか。
【市 長】そう。県と協調していく。
【記 者】無利子とか無担保、無保証は、水産業に限らず中小企業などに出てくるが、今回のこれは経済制裁措置で影響が出ることで打ち出される事業と思うが、従前のすでにメニュー化されているものでなく、特別に新規事業として農水省が出すという趣旨だったのか。
【市 長】そういう意味合いと受け止めている。金利についてもこのたびの対策は、超低金利にまで考えていきたいという返事だった。
【記 者】そうなるともう少しアウトラインとか枠とかが農水省から出てこないと、12月議会に間に合わせるといっても無理があるのでは。
【市 長】期間的には、例えば12月議会の補正に挙げるとなった場合でもまだ暇があると思う。
【記 者】あと1カ月あまりで新規を立てて出すのは間に合わないのではないか。
【市 長】具体化すれば12月議会に間に合わないことはないので、心配はしていない。いずれにしても、国、県、市が協調して支援することになる。姿は出てくると思う。まとまれば12月議会で対応したい。
【記 者】その他の支援で考えていること、市独自のものは。
【市 長】市独自ということでなく、これは県とよく協調して連携してやらないといけないと思う。市独自のものとしてできることには限りがある。県とよく相談して対応できれば対応していく。
【記 者】これまでは、制裁があっても地元業者は北朝鮮から入れていないので影響はないと言わざるを得ない部分もあったと思うが、実際にこうして操業が北朝鮮海域でできなくなると大きな影響が出てくる。向こうで操業できなくなると具体的にはどれくらいの影響があるのか。
【市 長】具体的には聞いてないが、年間1万1000トンから1万2000トンのベニズワイガニの水揚げがあり、このうちその3隻が大方3分の1を水揚げしていたのであるから、影響の大小でなく何がしかの影響はあることは間違いないだろう。
【記 者】地元加工業者の多くは困るのでは。
【市 長】私が聞いているのは、昨年の中ごろから加工原料については、国内の揚がるところから移入して確保したり、あるいはカナダ産のカニを入れたりして、事業者の方々は努力をされているということ。どの程度といった額的な影響は把握していない。
【記 者】水揚げが3分の1そっくり消えることに関連して、他の県外の港に揚げている船に境港に揚げてほしいと言う手もあると聞いたが、こういうことは可能なのか。
【市 長】それぞれの市場で需給があるであろうから、供給が過剰であればこちらの方にということもあるかもしれないが、そういうことまで把握はしていない。こちらの方に移入をしている実態はあるようなので、そういったことも考えられるのでないか。
【記 者】環日本海拠点都市会議で、北朝鮮関係のことが話題とか議題になることはなかったか。
【市 長】とくに話題になることはなかった。
【記 者】元山市との友好提携の破棄関係については、話しをしたのか。
【市 長】琿春市とは友好都市を結んでおり、そこの副市長が参加されており、情報として経過を直接、個別にお話をして理解をいただいたところ。
【記 者】驚いていたか。
【市 長】とくにそういった反応はなかった。
【記 者】琿春市と元山市とは関係、つながりはあるのか。
【市 長】ない。
【記 者】環日本海拠点都市会議ではこれまで北朝鮮の参加を促してきたが、今回は。
【市 長】拠点都市会議では、当初から北朝鮮の都市の参加を呼びかけようと働きかけをしてきた経緯があるが、これまで参加はない。今回は何もなかった。
【記 者】話題にならなかったのか、やめようとなったのか。
【市 長】これまでは参加を促す話題が毎回あったが、やめようということでなく、特にそういう話は出なかった。
【記 者】元山市に文書を送った訳だが、向こうから回答はあったか。
【市 長】今現在、そういった反応はない。
【記 者】琿春の副市長と話をしたのは。
【市 長】琿春市とは友好都市提携を結んでいる。琿春市はロシア、北朝鮮の国境沿いにある都市で、ロシアや北朝鮮との交流は日常的にある。私の方から直接副市長に、そのことをお話した。
【記 者】経済制裁の影響について、直接3者からの要望は。
【市 長】今回の要望についても、行政がこういう点を要望しようということでなく、水産業界の方で、この5点を国に出すことにまとまったということで、今後も、主体になるのは業界の皆さんになろうと思う。
【記 者】北朝鮮の核実験の2回目があるとかが伝わっているが、思うところは。
【市 長】絶対あってほしくないの一言だ。これは境港市ということではなく、皆さんがそういう思いではないかと思う。境港の首長だからということではない。
【記 者】日韓の暫定水域のことで、一番直接影響があると思うが。
【市 長】ここの海域で韓国との競合がある訳で、しかも、きちんとした操業ルールが守られていない状況がある。今年から国レベルでも協議が始まったが、それまでは民間にゆだねられていた。これからは、しっかりと国レベルでこの問題の解決を早急にお願いしたいということも水産庁長官にはお願いした。
【記 者】ベニズワイガニの漁場整備で、アウトライン的なものはなかったか。
【市 長】水深の深いところに海洋牧場をつくるのに技術的にどういう問題があるのか、業界とよく聞き可能であればやりたいという話だった。水深が深いので、そのあたりから調査し可能なら行政も考えていきたいとのこと。
【記 者】一般的な漁場整備としてとりあげるものか。
【市 長】資源保護計画もある。2カ月の休漁期間を3カ月にしたところに、3隻が参入してくる訳であり、延長したものが無になる。そういった資源保護の観点を踏まえて、まず調査をして技術的問題がクリアできれば前に進んでいきたいとのこと。
【記 者】水産業者以外の制裁の影響は。
【市 長】荷役業者等が考えられると思う。細部にわたれば影響はあるだろうが、今思い浮かぶのは荷役。
【記 者】それについて業者側からの要望は出てきてないか。
【市 長】聞いていない。
【記 者】北朝鮮船が泊まらなくなってがらんとした感じだが、舞鶴では、港湾管理者で民間の方に港利用の働きかけをしているようだが、境港では考えはないか。
【市 長】従来から貿易港として国の内外にポートセールスしている。これは引き続きやっていくべきものと思っている。
【記 者】束草市と境港市は友好都市を結んでいないが、つながりは。
【市 長】友好都市は結んでないが、過去に水産研修生を相互に派遣した実績がある。
【記 者】これまで風評被害を心配していたが、今回、公に支援を求めていかないといけない状況に変わったのは。
【市 長】業界の皆さんはそれを一番懸念されていたことであり、今日までそうだったと思う。皆さんがそういった思いでいらっしゃるのに、同じ思いにならないといけないと、これまでこういった機会には「そう大きな影響はないと聞いている」という表現をした。実際に経済制裁が発動され、何がしかの影響はある訳で、このことについては国に対し一生懸命要望していくということである。




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